先生がいてくれるなら③【完】

朝のうちに、先生には『夕方に電話します』と携帯にメッセージを送り、仕事を終えたであろう頃を見計らって、料理を渡したいのと、話があると言うことを電話で伝えると、仕事帰りの先生が家まで私を迎えに来てくれた。



車に乗り込むなり、先生に「昨日の停電、大丈夫だったか? 結局いつ電気点いたんだ?」と聞かれ、ドキッとする。


「あ、えっと、その話は先生の家に着いてからしますね」


そう言って半分引きつった頬でにこっと笑うと、先生は一瞬首を傾げて、「なに。長くなるってこと?」と問う。


こう言う所、ほんと鋭くて困る。


私が「まぁ、それなりに……」と言い淀むと、運転しながら横目でチラリと私を見た。


「ふぅん。分かった」


この人、全てを見透かしてそうで、ホントこわい……。



私の家と先生の住むマンションとは、車だとそんなに時間は掛からない。


するすると滑るように走る車は、あっという間に先生のマンションの前まで来て、地下駐車場へと飲み込まれていく。


いつもの駐車スペースに車を止めると、すぐに一台の車が駐車場へと入ってきて、私たちの乗っている車の隣にスッと止まった。


見覚えのある車に、見覚えのある人物が乗っている。


「……あ、広夢さん」


私が気付くよりもずっと先に気付いていた先生は、既にちょっと不機嫌な顔をしていた。


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