先生がいてくれるなら③【完】


夏休みと言えども、教師は仕事だ、学校へ出勤しなければならない。


学校に着いたタイミングで、立花から『夕方に電話します』というメッセージが入った。


俺の日中のスケジュールは立花も把握済みで、余程のことがない限りは、俺の勤務中は携帯に電話を掛けてこない。


メッセージやメールの類いすらも、ほぼ寄越さない。


だから、珍しいな、と思っていた。


昨晩のうちに、今日電話をする事は話していた。


よほど何か俺に言いたいことがあるんだろう、ぐらいに捉えていた。


それが、あんなにとんでもない話を聞かされるとは、本当に思ってもいなかった。



立花から電話があったのは、夕方仕事を終え、そろそろ学校を後にしようかと思った頃だった。


まるでどこかで見ていたかのようなタイミングの良さに、思わずひとり数学準備室で笑みを漏らす。


何の話があるのかと思うと、『料理を渡したいから』と言う。


──と言うわけで、仕事帰りに立花に会えることを楽しみに、かなり上ずった気分をなるべく顔に出さないようにしながら、学校を後にした。


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