先生がいてくれるなら③【完】
立花の家の前に到着すると、様子を窺っていたらしい立花が、すぐに大きな荷物を抱えて出て来た。
立花から荷物を受け取り、助手席のドアを開ける。
少しはにかみながら助手席へと滑り込んだのを見届けて、ドアを閉めた。
荷物は運転席の後ろのシートに置き、運転席へと乗り込む。
「昨日の停電、大丈夫だったか? 結局いつ電気点いたんだ?」
俺は車をゆっくりと発進させ、一番気になっていたことを立花に尋ねた。
「あ、えっと、その話は先生の家に着いてからしますね」
「なに。長くなるってこと?」
苦笑しながら答える立花に、俺は少し首を傾げて見せた。
自家発電から切り替わったのがいつなのか、あの部屋にいると分からなかった。
今日のこの時間を立花と過ごすため、電話の後は仕事に集中していたし。
それなりに長くなる、と言う趣旨の返事をする立花の表情をチラリと横目で確認したが、苦笑いしてるぐらいにしか見えなかった。
車を地下の駐車スペースへと止めると、すぐに一台の見覚えのある車が入ってきた事に気付く。
──広夢か。
隣に止まった車の運転手が俺の弟だと、遅れて立花も気付いたらしい。
光貴に勉強のことで聞きたいことがあるらしく、しばらくの間は光貴の部屋に寝泊まりする事にしたと言うことは、既に二人から聞いている。
だが、いま広夢と言葉を交わすと、立花が広夢を夕飯に誘いかねない……。