先生がいてくれるなら③【完】

それでなくてもなかなか立花との時間が長く取れないのに、広夢に邪魔されるのは正直言って全く嬉しくない。


広夢が車から降りてエレベーターに乗り込む前に、さっさと上に上がってしまいたい。


俺はそう考えて、立花の荷物を持って先にエレベーターホールへと足を向ける。


「おい、早く来い」


立花を急かすように声を掛けるが、立花は広夢の方を振り返って歩みが鈍る。


──チッ。


思わず舌打ちしたのと同時に、広夢が小走りで立花の隣に並んだ。


広夢と立花は、のんびり挨拶なんかしてる。


ムカツク。



結局同じエレベーターに乗ることになり、思わずまた舌打ちしてしまうと、広夢がクスクスと笑っている。


「広夢、お前、光貴のところだろ？」


それ以外は認めないからな、絶対。


広夢からは「まぁね」と曖昧な返事が返って来る。


すると、立花が「あの、広夢さん、今からちょっとだけお時間ありますか？」なんて声を掛けていて、俺は思わず眉間の皺を深めてしまった。


広夢が「僕は大丈夫だけど……」と言いながら、俺をチラリと見る。


大丈夫じゃない、断れ。


って言うか、立花お前、なんでコイツを誘う？


何の用事があるって言うんだ？


無いに決まってる。


立花をジロリと睨むが、「広夢さんにも同席して頂きたいんですが……」と言うので、すかさず「却下」と棄却した。


──しかし、どうしても広夢も関係している話がある、との事で、渋々、本当にかなり渋々、了承するしかなかった。