先生がいてくれるなら③【完】

──立花の話は、およそ、俺の機嫌を損なう話ばかりだった。


雲行きの怪しい時に外出することも、雷の中帰宅しようとすることも、──細川の家に上がり込むことも……。


かなり我慢して聞いていたが、『細川の部屋に上がり込んですぐに停電になった』と聞いて、俺の我慢も限界に達した。



「お前なぁ、」



思ったよりも低く強い声が出る。


きっと立花を怖がらせただろうけれど、だが、仕方がない。


俺だって、かなり本気で怒ってるんだ。



広夢が「話の続きを聞こう」と、俺を宥める。


くそっ。


気分の悪い話を、まだ聞かなきゃならないのか。



停電したことで、立花は、去年倉庫に閉じ込められた時の恐怖が蘇ったらしい。


それは確かに可哀想ではあるが……正直言って、自宅で大人しくしていればそんな事にもならなかったわけで……。


しかも、過呼吸になったのを細川が対処した、って言うのが、あまりにも気に入らない。


このままだと怒鳴り散らしそうだ。


立花に不埒な想いを寄せる細川が、過呼吸の対処だけで済ませたとは到底思えない。


同じように不埒な想いを持つ俺がそう思うのだ、恐らく間違いは無いだろう。



──くそっ。


何を、どこまで許した……?


触れさせたのか、あの男に……?


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