先生がいてくれるなら③【完】
──確かに、俺との関係を疑われるよりも先に、“広夢と付き合っている仲” だと思わせる方が、年齢的にも関係的にも自然だし、安全ではある。
俺と一緒にいる所を万が一見られてしまったとしても、立花が “彼氏の兄” と言葉を交わす事は、さほど不自然では無い。
──そう思わせるための作戦だとしても、複雑な気分になるのは俺の心が狭すぎるせいなのか。
どこまでも黒い嫉妬心が俺を支配していて、狂ってしまいそうだ。
「あの、先生……あの時、嘘ついて、ごめんなさい……」
立花が、本当に申し訳なさそうに頭を下げて謝るが、今はとても許せる気分には到底なれそうもない。
立花だけが悪いんじゃない、と、分かっていても……。
「お前、危機感なさすぎだって、何度言ったら分かる?」
「はい……すみません……」
俺の言葉に素直に謝るが、暴れ出してしまった俺の感情は止まることもなく、もしこのまま話し続ければ、立花を口汚く罵ってしまいそうだった。
「……悪いけど今日はもう帰って。いま口を開いたら、多分立花を傷付ける。広夢、家まで送ってやって。俺じゃ事故るから」