先生がいてくれるなら③【完】
──しばらくすると、立花を家まで送り届けた広夢が、戻ってきた。
話がある、と声を掛けられ渋々リビングへ行くと、広夢が難しい顔をして座っている。
「なんの話だ?」
「うん……。まず明莉さんの過呼吸だけどね。兄さんには申し訳ないけど、ひとりの時じゃなくて良かったと思うんだよね」
「……過呼吸では死なないだろ」
「直接的にはね。僕は、生死の問題じゃ無くて、メンタルの方の問題だって言ってるの。もしひとりの時に真っ暗闇で過呼吸になってたら、彼女はきっともっとパニックになってた」
「……」
「あの先生がどう対処したのか詳しくは聞いてないけど、それなりに適切な対処だったんだと思うよ」
たとえそうだとしても、細川が立花の傍にいた事を、立花があの男の家に上がり込んだことを、簡単には許せそうに無い。
「あとね……、あの先生、家の近くまで様子を見に来てた」
「……」
「明莉さんのことが心配で、様子を見に来たんだと思う。とりあえず気付いてないふりして、ついでに彼氏のふりもしといた」
「……彼氏のフリ?」
「親密そうに見せかけといた。あ、もちろん、指一本触れてないから」
「……」