先生がいてくれるなら③【完】
頭の回転の速い広夢のことだ、きっと、なるべく立花を困らせないように、そして、嫉妬深い兄を怒らせないように、気を付けて行動してくれたんだろう。
そのあたりは、さすがだと思うし、実際のところ信頼もしている。
「孝哉兄さんが怒るのも分かるし、心配なのも分かるよ。でも、だからこそ、ちゃんと話し合った方が良いと思う」
弟にそう言われるなんて、兄としては情けない限りだ。
「……分かってる」
「残りの夏期休暇中は光貴兄さんの所に泊まる予定だったから、その間の明莉さんの送り迎えは僕が引き受けるよ。申し訳ないけど連絡先も交換させてもらった。もちろん、必要最低限の連絡以外は、しません」
俺の怒るツボをしっかりと心得ている広夢に先手を打たれ、怒るに怒れなくなってしまう。
はぁ、と思わずため息がでてしまう。
しばらくの間、立花の送り迎えを広夢にお願いすることになった。