先生がいてくれるなら③【完】
──翌日、広夢の迎えの車で、立花が再び俺の部屋に来た。
立花は、おろおろと、困ったように視線を彷徨わせている。
「昨日の、あの後のこと……広夢から聞いた。細川が来たって……?」
「はい、えっと、遠くから様子を窺ってただけみたいですけど……」
はぁ……、あの男、ストーカーかよ。
いや、そもそも、だ。
「お前、なんでそんなにあの男に懐かれてるわけ?」
「えっと、分かりません………」
はぁ。
昨日と今日だけで、一体何度ため息を吐いたことだろう、一生分に近いぐらいは吐いたんじゃないだろうか。
隣で姿勢正しくソファに座る立花を引き寄せ、ギュッと抱き締める。
「もうお前のこと、閉じ込めておこうかな……」
俺が真剣な声でそう言うと、立花は「えっ」と焦った声を出した。
「俺以外の男見るの、禁止。見られるのも禁止」
「そ、そんな、無茶な……」
確かにこの言い分は無茶かも知れないけど、気持ちとしては、本気だ。
そう出来たなら、どれだけ良いか……。
「私は、先生以外は好きじゃないですってば。ほんとです」
そう言って俺の背中に手を回し、ギュッと抱きついてくる。
立花の言動に、少しだけ気分が上向きになる単純な自分が恨めしい。