先生がいてくれるなら③【完】
俺は目をゆっくりと閉じて、「ん」とキスを催促した。
ほら、しなきゃ、直んねーぞ?
いまどんな顔してるのかだいたい想像できるな、なんて思いながら、立花の唇を待つ。
たっぷりと躊躇いの時間をとったあと、ふわりと甘い暖かさが唇に触れ、優しく押しつけられ……、ゆっくりと離れた。
──あぁ、あまりの愛おしさに、目眩がする。
目の前に、顔を赤らめて恥ずかしそうな表情の可愛い恋人がいる。
恥じらいながら俺を見つめる立花の瞳は少し潤んでいて、一体どこでそんな誘惑方法を覚えてきたのか。
真っ赤に染まった耳殻を、指でゆっくりとなぞり唇で食むと、くすぐったい、と可愛い声を上げる。
ふぅん、“くすぐったい”、か……。
くすぐったいうちは、まだまだ、かな。
そう思いながらも、「“くすぐったい” と “気持ちいい” の違いって、何だと思う……?」と意地悪く問いかける。
「分からな、い、」
まぁ、仕方ないか。
いや、仕方ないって言うより、今はまだ、その答えは分からないで欲しい、とも思う。
結局は俺の自分勝手な邪な思いなのだ。
まだ高校生の立花は知らなくて良い。
──そのうち、俺がたっぷり教えてあげるから、その時までおあずけ、だな。