先生がいてくれるなら③【完】
つい先日まで高峰さん相手に格闘してきた案件と同様のことが、またここで繰り返されるとは思わなかった。
そんな簡単なことにすら気付かなかった私は、やっぱり危機感が無さすぎるんだろうか……。
「どうしよう……」
今更ながら、先生と付き合うことがどれだけ難しいことなのか、また、どれだけタブーとされていることなのかを思い知らされる。
「しばらくは外で会わない方が良いわね」
「準備室にひとりで行くのも、控えた方が良いかも」
「いくら入室前の声かけを必須にしてても、無視して乱入されたら終わりだもんね」
「あ、俺、それ前科有るわ! ははは!」
私ひとりを蚊帳の外にして、なぜか話が盛り上がっている。
もともと外では滅多に会わないからあまり変わらないんだけど、これからはマンションへの行き帰りも、更に気を付けなきゃいけないんだろうな。
みんなには言ってないけど、細川先生の件もあるし……。
──はぁ、なんだか厄介なことになって来た。
受験の日も近づきつつあると言うのに、なぜこんな厄介ごとがこんな時期に舞い込むのか……。
私の日頃の行いが悪いせいなのかな。
「どうしても数学準備室に用事がある時は、いまここにいるメンバーの誰かに声を掛けて、必ず一緒に行ってもらうようにすること、分かった?」
そう悠斗に言われ、不承不承、コクリと頷いた。
「とにかく気を付けること!」と集まった全員に何度も言われ、解散となった。