先生がいてくれるなら③【完】
緊張で手が震え、指先が冷たくなっていくのは、冷房が強めに効いているせいではないと思う。
どうしよう、どうすればいい……?
緊張する私、硬く険しい表情のまま黙り込んでいる先生方──。
校長先生が教頭先生に目配をせして、教頭先生がひとつ咳払いをした。
「昨日、匿名の電話があって──立花さん、あなたと、当校の教師が、付き合ってるんじゃないか、と……」
や、やっぱり、その話題……。
私の心臓がはち切れんばかりに激しく動いていて、思わず息苦しくなる。
「……あの、……」
予想はしていたけれど、いざとなると、すぐには声にならず、ただ指先がますます冷えていくのを感じているだけだった。
いつ、どこで、見られたんだろう……?
誰が、見たのだろうか……。
藤野先生からも、光貴先生と広夢さんからも、私の感情は “顔に出やすい” と言われている。
きっと今だって、こんなにも青ざめていることは、ここに集まっている先生方にはバレバレだろう。
だけど、たとえ演技が下手でも、なんとかしなきゃ……。
大好きな先生に、迷惑をかけたくない。
どうしよう、どうしよう……。
混乱して適切な言葉を選び出せない私に、教頭先生が先に言葉を発した。
「──細川先生とのことを、聞かせて下さい」
……。
……は、い?