先生がいてくれるなら③【完】

「匿名での電話の内容は、“3年3組の立花さんが、英語の細川先生と付き合ってる” と言う趣旨の電話でした。何か言うことはありますか?」


「あ、あり、ます。まず、そんな事実は、ありません」


私が堂々とそう言い切ると、教頭先生は「本当ですか?」と、明らかに疑いの眼差しを向けてきた。


「はい、本当です」

「ですが、先週の日曜日に、駅前であなたが細川先生とデートしている所を見た、とその人物は言っています。それについてはどうですか?」



──あぁ、藤野家の食事会の日のこと、か。


思わずうんざりしてしまったのが、顔に出ていなければ良いけど……。



「あの日は確かに、駅前で細川先生に偶然お会いしました。でも、私は他の人と待ち合わせをしていて……待っている間に細川先生に偶然会ったので、挨拶をして、少し世間話をしていただけです」



間違ったことは言っていない、広夢さんが来るまでの間、少し会話をしただけだ。


だけど、それを見られただけでこう言う問題に発展してしまうのは、やはり細川先生が女子生徒に人気があるからなのだろう。



──ほらね。


だから、『もう私に構わないで下さい』って、何度も言ったのに……。


ひとり心の中で愚痴るが、こうなってしまえばもう後の祭りだ。


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