先生がいてくれるなら③【完】
「本当に、それだけですか?」
「はい」
私はそう言い切ったが、教頭先生と生活指導の先生は目配せをしていて、なんだか不穏な空気が漂う。
「細川先生が立花さんに、何か……例えば言い寄ったり、あなたが不快に思うような事をしたと言う事実はありますか?」
「ありません」
「本当に……?」
「はい、無いです」
話しかけないで欲しい、と言う趣旨のことを言ったけど全然守って貰えてないことは、これもいま言うととても面倒なことになるので、伝えないでおく。
あと、ことあるごとになぜか私の頭を撫でてくることも……。
ついでに、落雷で停電したあの日の一部始終は、絶対に口に出したりしない、きっと間違いなく面倒なことになるから。
私が『何も無かった』と答えたことで、この部屋にいた先生全員が安堵の表情を浮かべたように思う。
そりゃあ、自校の教師が生徒と付き合ってるとなると、学校としては大問題だ。
──そう、大問題、だ……。
私と細川先生との間には何も無いと判断されたらしく、「教室へ戻って良いです」と言われ、私は教室に戻ることができた。