先生がいてくれるなら③【完】

ちなみに、どれぐらい甘いかって言ったら────



「ごちそうさまでした。美味しかった」


先生が丁寧に手を合わせて、小さく頭を下げる。


食べ終わった後のお皿の上はとても綺麗だ。


「お粗末様でした」


先生は私の作った料理を、いつもとても綺麗に食べてくれる。


それも、とても美味しそうに。


そんなに特別な物を作っているわけではなく、ただの家庭料理──例えばハンバーグとか、煮物とか、そんな普通のものなんだけど。


いつも必ず食べる前に静かに手を合わせて「今日も美味しそう。いただきます」って言うし、食べ終わると、同じく手を合わせて「ごちそうさまでした。すごく美味しかった」と笑顔で言ってくれる。


たったそれだけの事だけど、私はとっても嬉しい。



先生との食事は本当に楽しいし、何よりも、すごく勉強になる。


先生は、箸の上げ下げがとても美しい。


やっぱり育ちが良いのだと、実感する。


私はごく普通の家庭で育ったので、簡単なマナーしか知らない。


だから先生と一緒に食事をすると『次からはここに気を付けよう』と思う場面がたくさん出てくる。


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