先生がいてくれるなら③【完】

実は最近、食べ方のマナーを知りたくて作るメニューも結構ある。


例えば、“焼き魚” がそうだ。


先生の食べた後のお魚は、“猫またぎ”。


もう、猫すら『食べるところが残ってない』と思って跨いでしまうぐらい、骨だけを残して綺麗に食べる、と言うこと。


そして、やっぱり所作も美しいし、何より私が勉強になったのは、食べる順番。


焼き魚は、どう箸を入れてどの部位から順に食べるか、マナー上、実はちゃんと決まっている。


それを間近で見て覚えようと、焼き魚をメインにした和食を用意したこと、先生には内緒だ。



──食事が終わり私が食器をシンクに運ぼうと腰を上げると、先生が「俺が持って行く」と言ってさっさと持って行ってしまった。


「すみません、ありがとうございます」

「どういたしまして」


先生の部屋のキッチンには、すごーく高級な食洗機があって、私は密かにこれを使うのが楽しみだ。


先生は一人暮らしなので、一度もこれを使ったことがないらしい。もったいない。


二人分の食器プラス調理道具を入れてもまだ余裕のある外国製の食洗機は、いつも食器をピカピカに洗い上げてくれる。


すごく素敵。


< 236 / 352 >

この作品をシェア

pagetop