先生がいてくれるなら③【完】

夏休みが終わり、2学期が始まった。



長い休みを挟んだからか、俺が担任を受け持つ3年2組の教室内は、1学期の頃の雰囲気とは少し違う空気が流れている。


うちのクラスは “理系の選抜クラス” で、そこそこ頭の良いヤツばかり。


進路も、難関の理系国公立大学を狙う者が多い。


国公立大学は狭き門と言う認識なはずだから、きっと夏休みはそれぞれ塾に通ったりしてみっちり勉強していたに違いない。



──それなのに、だ。


いまこの教室に流れる “1学期とは違う空気” は、目一杯勉強をして来た空気とは真逆の、どこかそわそわと落ち着かない、そんな雰囲気だ。


まさかうちのクラスの奴らに限って、夏休み中ほとんど遊んでた、なんて事はなかろうな……。


そんな恐ろしい考えが頭を過ぎり、俺は一瞬身震いがした。


私立高校だと、『生徒の成績イコール、教師の成績』とされる場合がある。


たった二年間とは言え私立高校に在籍したことのある身としては、ほんの一瞬、それを思い出してしまって思わず身がすくんだ。


でもさすがに公立高校ではそこまでシビアではないので、頭の中の一抹の不安をなんとか払いのけ、ホームルームを進行する。


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