先生がいてくれるなら③【完】

男子たちは “何のことか分からない” と言った様子で首を傾げていたり、そもそも興味が無くて参考書を読み始めるヤツがいたり……。


しかし女子たちだけが、俺を射るように見つめている。



……はぁ、と俺はため息を吐いた。


進路のことで、何度も、しかも長時間面談した結果、……に違いない。


そりゃ、あんだけ近くで長い時間顔と顔をつきあわせてりゃ、バレるわな……。


覚悟はしてた、だけど、うちのクラスの女子に限って、こんな雰囲気になるだなんて思ってもみなかったのだ。



「ばかばかしい」


そう、あまりにも、ばかげてる。


「くだらないこと考えてないで、受験生なんだから勉強しなさい。以上っ」


俺はそう言い捨てて、ホームルームを無理矢理終わらせた。


俺の素顔をだいたい把握してるはずの数研の部員2人と、恐らく立花から聞いてある程度の事を知っているであろう倉林が、俺を同情の目で見ている。


だったら助けてくれよ、と恨みがましく思いながら、俺は教室を後にした。



どうやら俺の素顔を問題視しているやつらは、今のところはまだうちのクラスの女子だけらしく、他のクラスで授業をしたが、特に変な空気が流れることも無かった。


だが、女子どもの噂話ほど怖いものはない。


あっという間に広がるのは目に見えている、前の学校の時にように取り囲まれるのも時間の問題だろう。


思わず、前の職場での同僚教師だった岩崎の顔が目の前を過ぎる……。


……そろそろ、本格的に色々と考えなければならない時が来ているのかも知れない。


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