先生がいてくれるなら③【完】
「で、お前はなんて答えたんだ?」
「えっと、“挨拶をして世間話をしただけです”、って答えました」
「……雷の夜のこととかは?」
「言いませんでした。いくら私が “ぼんやり” でも、さすがにあれは……。それに、それ以上追求されませんでしたから」
「ふぅん? まぁ、校長も身の保身の方が大事だもんな」
「……どう言うことですか?」
「部下である教員が不祥事を起こしたとなると、校長も処分されるかも知れないだろ。それを恐れたってこと」
「……あぁ、なる、ほど……」
分かってるのか分かってないのか。
まぁ良い、この件はもうこれで終わりだ。
きっと細川も校長に呼び出されて、同じ事を尋ねられただろう。
これであの男も、これ以上うかつに立花には近づけないに違いない。
家が近いからこれからも顔を合わせる機会はあるかも知れないが、今までみたいに立花にちょっかいを出さないならば、とりあえずは許すとしよう。
立花も相手にしてないみたいだし……と言うか、細川が好意を寄せていることもピンときていないみたいだし。
立花は呼び出されて緊張しただろうけど、俺としては、厄介な男を直接手を下すことなく撃退できて、少し安心した。
危機感のない女を彼女にすると、苦労が耐えない────。