先生がいてくれるなら③【完】
──と、そんな風に、今年の文化祭は概ね和やかに、楽しく、過ぎて行った。
そして、二日目最終日の、後夜祭──。
今年も仕掛け花火が校庭にセッティングされていて、陽が傾き始めた頃、全校生徒が校庭に集まっていた。
実行委員会の委員長が文化祭の成功のお礼を述べたりするスピーチが、遠くに聞こえる。
──そんな中、私はひとり校舎内にいた。
最初は椿と一緒に校庭へ出ようとしていたんだけど、全校生徒が一斉に校庭へ向かった結果、階段や廊下は生徒達で溢れ、私は椿とは途中ではぐれてしまった。
そして──私はどさくさに紛れて、隠れるように校舎内へと戻って来たのだ。
廊下をフラフラしてたら間違いなく実行委員の息の掛かった生徒に見つかって校庭へ引きずり出されてしまう。
私はポケットに入っている鍵を確認し、特別教室棟の4階にある、ある小さな部屋へと足早に向かった。
それは、5月から掃除をする代わりに部屋を間借りしている、将棋部の部室。
将棋部はいま部員が3年生一人しかおらず、実質的には活動していない。
その部員さんは市橋君の親友で、市橋君の口添えで私が将棋部の部室を借りているのだ。
新一年生が数研に入部して、さすがに顧問の藤野先生が数研に全く顔を出さないなんてわけにはいかない。
そうなると、出て行くのは、私で……。
行く場所を失った私に市橋君が色々と骨を折ってくれて。
時々二つの部室を携帯のテレビ会議システムで繋いで新入部員と会話したりする。
そう言うのも新鮮で楽しい。
数研の部員はみんな優しくて、大好きだ。