先生がいてくれるなら③【完】
『まだ起きてた?』
ちょうど日付が変わってすぐ、つまり夜中の12時に先生からの電話。
先生は相変わらず忙しいし、私も夜は受験勉強をしているので、平日のこんな時間に先生から電話があるなんて、本当に珍しいことだった。
「はい、まだ起きてました。キリの良いところまでやっちゃいたくて」
私がそう答えると、先生は『起きててくれて良かった』って嬉しそうに言う。
そして──
『誕生日おめでとう』
……あ、そうか、今日は私の誕生日なんだった、すっかり忘れてた。
『一番に伝えたくて。明日学校で話せるかどうか分からないし』
「あ、ありがとうございます! 覚えててくれたんですね、嬉しいです」
『覚えてるに決まってるだろ。去年は入院してたもんなぁ。俺は修学旅行だったし』
そう言えば、そうだったなぁ。
でも、あの入院があったからこそ今があるのだと思うと、あれも無駄ではなかったのだと、改めて思う。
不測の出来事に巻き込まれて、先生に告白したことを悔いた時もあったけど、それでも今はこうやって再び大好きな先生と気持ちを通わせることが出来たことは、素直に、本当に嬉しい。
『立花、夜って、外出できる?』
「はい、大丈夫です」
『本当はもっとちゃんとお祝いしたいんだけど、状況が状況だけに無理だから、ほんとに会うだけになっちゃうけど……』