先生がいてくれるなら③【完】

こうして、誕生日の日の夜、先生のおうちにお邪魔することになった。


この提案をしたのは、どうやら光貴先生と広夢さんらしい。


光貴先生はずっと病院に寝泊まり中で、夜に一度帰って、必要な物を準備して、数時間後に再び病院に戻らなきゃならないそうで……。


その送迎に同乗させてもらう事になった──と言うのは多分、私に気を遣わせないための、お二人の配慮なんだと思う。


本当に素敵な弟さん達だな……。




翌日の誕生日当日──。


やっぱり学校ではひと言も話せそうにもなくて、でも、先生が授業中に私をチラチラと見てるのは分かった。


周りに気付かれないようにニコリと笑うと、先生は他の生徒に気付かれないように小さく頷いて返してくれた。


そんな些細なことでも嬉しくて、心がじわりと温かくなる。


前みたいに個人的に話をすることは出来ないのは寂しいけど、仕方ない。


誰かに私たちの関係が学校の誰かにばれてしまったら、それこそもう二度と会えなくなる。


それだけは絶対にイヤだ、先生に会えないなんて、声を聞けないなんて、そんなの、地獄だから。


私が高校を卒業したら、きっと、もう少し自由に会えるようになる。


……そう信じて、いまは我慢するしかない。



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