先生がいてくれるなら③【完】

──夜7時に広夢さんが迎えに来てくれて、私は先生のおうちにお邪魔している。


夕飯は私が用意する、と先生には事前に伝えておき、学校帰りに適当に食材を買って大急ぎで調理して、いくつかの料理を保存容器に詰め持参した。



「先生、シャンパングラスって、ありますか?」

「……あるけど、酒はダメだぞ?」

「あはは、もちろん分かってます。お酒じゃないから大丈夫ですよ」


私がそう言うと、先生は食器棚からシャンパングラスを出してくれた。


「ほら、これ。スパークリングウォーター、炭酸水です。グラスに注ぐとちょっとシャンパンっぽくて、良い感じでしょ?」


そう言って笑ってみせると、先生は「あぁ、なるほどね。良いアイデアだな」と言って、私と同じように笑ってくれた。


私は高校生だから当然お酒は飲んじゃいけないんだけど、先生にそれを付き合わせるのが申し訳ないって、ずっと思ってた。


今夜は私が帰ったらきっと先生は持ち帰った仕事をするだろうから、先生も飲めない。


でも、せっかくだから雰囲気だけでも楽しく行きたいな~、って言う、私の勝手な気持ちだったけど。


それでも、先生は “良いね”って言ってくれる、それが私には何よりも嬉しい。


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