先生がいてくれるなら③【完】
そんな私の気持ちを推し量ってか、先生が「……ちょっとだけ、練習、してみる?」と尋ねた。
「練習……?」
「そう、練習。とりあえず、キスしてる時に息が出来ないと、長いキス出来ないし」
「息……」
「いつも止めてるだろ?」
「……たぶ、ん……?」
「分かってないんだ」
「うーん……」
止めてる、と自覚してるわけじゃない気がする。
息できなくて苦しいな、と思っては、いた。
改めて考えてみると、それが自分が息を止めてるからなのか、息がしにくいからなのか、実際のところ判然としない。
だって、キスをしてる時は、そんな事を考える余裕なんか全くないから……。
先生はくっつけたままだった額を一度少し離して、私の瞳を覗き込んだ。
「鼻で息して。お前のあんまり高くない、可愛い鼻、ちゃんと使ってあげないと」
そう言って先生は、私の鼻の頭を指先でツンと突いた。
「……“あんまり高くない”、の部分は余計ですっ」
「ははっ、それは失礼」
先生は私の緊張を解すためなのだろう、わざと軽口をたたく。