先生がいてくれるなら③【完】

先生の手が私の頬を優しく撫で、その手はそのままゆっくりと後頭部へと移動し、私の髪に指を差し入れた。


優しく、流れるような動きで後頭部を撫でられ、ゾクリと背中が粟立つ。


「……息、してる?」

「して、ます……」

「止めちゃダメだぞ?」

「は、い」

「……ん、そのまま、動かないで。普通に、息、してて」


それまでも、先生の顔はごく至近距離にあったけど、さらに近づいて、私は目をギュッと閉じた。


先生が、フッと笑うのが、目を閉じていても分かる。


「息、止めないで……」


私の返事を待たずに、私の唇に先生の温かく柔らかな唇がそっと重なって……。



普通に息をする、って、どうやるんだっけ……、ってなっちゃうぐらい、やっぱり、心臓がドキドキしてる。



また息を止めていることに気付いた先生が、「ダメだよ、ちゃんと鼻で呼吸して」ってキスしたまま甘い声で言うから、ますます混乱してきてしまう。


なぜだかやっぱり、ドキドキしすぎて、上手に呼吸が出来ない……。


すると、先生の唇がふいに離れ、私の鼻の頭にチュッと音を立てて口づける。


びっくりした私は「う、んっ……!?」と驚きの声を上げ、ぱちりと目を開けると、クスクスと笑う先生と目が合った。


「やっぱ、難しい?」

「えっと、……」


難しいと言うより、ドキドキしすぎて頭が混乱した結果、息を止めてるらしい……。


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