先生がいてくれるなら③【完】
──放課後はとにかく必死に仕事を片付けて、まだまだやらなきゃいけない事は山積みだけど、今日じゃなくても大丈夫なものは全て翌日以降に回すことにした。
今日はとにかく立花が最優先だ。
学校を7時よりも前に出るなんて、いつ以来だろう?
このところずっと夜9時までは残っていたし、家に帰ってからも持ち帰った仕事で本当に忙しい。
今日もいくつかの仕事は持ち帰らなければならなくなったけど、学校でなければ出来ない仕事だけは全て片付け、数学準備室の戸締まりをして、職員室へ顔を出す。
数学準備室と職員室の両方に自分の席を持っているので、職員室でも片付けを終えて帰り支度をしていると、世界史の福原先生が「あれ、珍しいですね、今日はもう終わりですか?」と声を掛けてきた。
福原先生は立花の一・二年生の時の担任だ。
「えぇ、まぁ、今日はちょっと用事があって」
俺がそう返すと、福原先生が「あぁ、もしかして、彼女とデートですか?」なんて聞いてきて、俺は思わず苦笑いをするしかなかった。
「あ、やっぱり」
俺の苦笑いを肯定と取る彼は、どうやら勘が良いほうらしい。
……立花のことも、二年間も受け持っただけあって、よく理解している。
勘が良い彼と話すのは、気を付けなければいけないだろうな。
適当に笑って誤魔化して、帰りの挨拶をして職員室を後にした。