先生がいてくれるなら③【完】
今日だって、俺が急に言い出したことなのに、これだけの料理を用意してくれた。
昨晩の電話で俺が「デリバリーにしようか?」と聞いたけど、立花は「自分で作るから必要ない」と言って、全てを用意してくれた。
こんなに出来た恋人を持って、俺は本当に幸せだなと心から思う。
そして、誕生日ケーキを用意したぐらいでものすごく喜んでくれるところも可愛すぎる……。
チョコレートで出来たプレートには、立花の下の名前を入れてもらった。
普段は名前で呼び合えないから、せめてこれぐらいは……。
予想以上に喜んでもらえたことに、俺もとても嬉しい。
「改めて……。18歳の誕生日、おめでとう、立花。生まれてきてくれて、俺と出会ってくれて、ありがとう」
これは、俺の本心だ。
誰に対しても一線を引いて接してきた俺が、人をこんなに愛せるなんて、思ったことも無かった。
立花も「私も先生と出会えて、本当に嬉しい」と、俺の想いに応えてくれる。
それが俺にとってどれだけ嬉しいことか、お前には分からないかも知れないな。
ローソクの火がゆらゆらと揺れている。
その光が立花の澄んだ瞳に映って、キラキラと煌めいていた。
立花がフーッと息を吹きかけて火を消す。
嬉しそうに笑う立花が眩しくて、心臓がドキリと音を立てた。
あまりにもドキドキとうるさく暴れ回るものだから、すぐ傍にいる立花に聞こえてしまうんじゃないだろうか……。
それを誤魔化すためにパチパチと手を叩き、ついでに軽口も叩く。
ケーキを切ってもらってる間にコーヒーを淹れて、心を落ち着かせた。