先生がいてくれるなら③【完】
もともと甘いものはそんなに嫌いではない。
積極的に食べるほどではないけれど、それでも脳を効率よく動かすためには糖分摂取はとても有効で、時折、疲労した脳のためにチョコレートを食べたりもする。
ただ、ケーキなんかは一人では食べる機会がないので、とても久しぶりに食べる気がする。
誰かの誕生日を祝う機会は社会人になってからは一度もなかったし、本当に、いつ以来だろう……?
……あぁ、多分、去年のクリスマスに立花と一緒に食べて以来だ。
そう思うと、案外ちっとも久しぶりなんかじゃなくて、思わず笑ってしまう。
“久しぶりにケーキを食べる“ のではなく、“立花と一緒に食べるのが久しぶり” なんだ──。
俺の思考回路は、もうずっと、全てが立花が基準になってしまっている。
もちろん、何の問題も無い。
食器を片付け終えるのを待ちきれない俺は、ソファに座ってそわそわとしながら、キッチンにいる立花を見つめた。
手際よく食器を食洗機にセットしている立花は、とてもご機嫌だ。
立花の自宅には無いから、これで洗えることが楽しいらしい。
可愛らしいことを言う恋人に、俺はすっかり心を奪われてしまっている。