先生がいてくれるなら③【完】
ようやく片付け終わったらしく、手を拭き終えた立花がエプロンを外してこちらにやって来た。
早く立花に触れたくて、手を伸ばしながら「早くおいで」と催促すると、ふわりと微笑んで、小さくて白く柔らかい手を俺へと伸ばす。
その手を絡め取って、立花を引き寄せて隣に座らせた。
「改めて……、誕生日おめでとう」
ほんのりと頬をピンクに染める立花は、この上なく可愛らしい。
「ありがとうございます。今日何度目かな、先生からおめでとうって言葉聞くの」
確かに、もう何度言ったか分からないぐらい、何度もおめでとうと言った気がする。
だけど、「何度でも言いたい気分」なのだ。
本当に、本当に、心から、おめでとう、立花……。
日々仕事に追われているけれど、愛しい恋人のための誕生日プレゼントはちゃんと用意した。
プレゼントの箱を差し出すと、立花はびっくりして目を丸くしている。
これは、お前のためでもあるけど、ある意味、俺のためでもあった。
──ペアの腕時計。
お揃いのものを、どうしても身につけていたくて。
立花はまだ高校生だから、指輪なんか出来ないし……、と考えていて、ふと思いついたのがコレだった。
腕時計なら、高校生の立花でも身につけていられる。
お揃いだから、腕時計を見る度に相手のことを思い浮かべることが出来る。