先生がいてくれるなら③【完】

“大人のキス”、ね……。



「ダメなわけじゃないよ、でも、お前を怖がらせたくないから……」

「大丈夫、です、怖くない」

「……ごめん、嘘ついた。訂正。俺が、怖い。お前を傷付けそうで」


これはもちろん、本心だ。


「多分、俺が我慢できなくなって、お前をめちゃくちゃにしそうで、……だから、怖い」


俺は生来、そんなに我慢強い方ではないと、自覚している。


だけど、大切な人を傷付けてまで自分の我を通すつもりは、毛頭無い。


立花が高校生のうちは、絶対に手を出さないって決めた。


本来は付き合ってるだけでもアウトなんだから、これぐらいの我慢は当然だろう。


本当はキスだって……、もっともっと深いキスをしたいと思ってるよ。


お前の知識に持ち合わせてないような、ぐちゃぐちゃになるような、そんな悪い口づけをしたいって、本当は思ってる。


……でも、そんなわけにいかないだろ?


ただ触れ合うだけのキスだって、お前はあんなに色っぽい表情になるのに……、それ以上になるのを見て、俺は冷静でいられるはずがない。



困り果てて立花を見下ろすと、悲しそうな瞳と目が合う。


……あぁ、もう、こいつのこの目に弱いんだよな……。


うー、……。


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