先生がいてくれるなら③【完】
「……ちょっとだけ、練習、してみる?」
結局、立花の懇願と誘惑に負けて、ほんの少しだけ練習することにした。
と言っても、呼吸の練習だ。
……そもそも、なんでキスすると呼吸を忘れるのか俺にはよく分からないんだけど。
まぁ、可愛いから全然良いんだけどね。
でも、キスをしながらでもちゃんと息が出来るようにならないと、次のステップには進めない。
「いつも止めてるだろ?」
そう問うと、自覚していないらしいことが分かった。
相変わらず面白いし、そんな所も可愛らしくて愛おしい。
立花の可愛い鼻をツンと突いて、「鼻で息して。お前のあんまり高くない、可愛い鼻、ちゃんと使ってあげないと」と俺が言うと、不服そうな顔をした。
ははっ、可愛い……。
さっきまで緊張して身構えていたけど、少しほぐれたみたいだな。
薄く朱に染まる立花の頬を、優しく、慈しむように撫でて、そのまま後頭部へと動かしサラサラの髪に指を差し入れる。
立花の身体が小さく震えるのが分かった。
「……息、してる?」
「して、ます……」
「止めちゃダメだぞ?」
「は、い」
「……ん、そのまま、動かないで。普通に、息、してて」