先生がいてくれるなら③【完】

俺が顔を近づけると、立花は再び小さく震えて、目をギュッと瞑る。


立花の可愛さと、今から好きな人に口づけることが出来る喜びに、思わず笑みを漏らしてしまった。


目を瞑ることで立花の長い睫毛がますます強調されていて、いつまでも見ていられそうだ。


息を止めないように言って、立花の返事を待つことなく彼女の甘い唇に自分のものをそっと合わせる。



……はぁ、たったこれだけの事なのに、本気で理性が飛びそうだ。


柔らかく甘い果実のような立花の唇に自分の唇を優しく触れ合わせるだけで、驚くほど胸がいっぱいになる。


心から愛する人とのキスとは、こうまでも気持ちが高ぶるものなのか、と思うと、全てが初めての立花が呼吸を忘れてしまうのも無理はないと思う。



はたと気付いて立花の様子を窺うと、案の定、息を詰めて苦しそうにしていた。


「ダメだよ、ちゃんと鼻で呼吸して」


唇を離すこと無くそう言うと、ますます息を詰めている。


んー、やっぱりまだ無理か……。



立花の唇から少し離れ、可愛い鼻の頭に音を立てて口づけると、立花は驚いて声を上げた。


パッチリと見開かれた瞳には、案の定、涙が滲んでいる。


あはは、ビックリお目々に、涙……、おもしろ……。



「やっぱ、難しい?」


顔を真っ赤にして、はぁ、はぁ、と荒い息を繰り返している立花。


自分でもどうして息を止めてしまうのか分かってないんだろうなぁ。


時計を見ると、もう少しで立花が帰る時間だ。


広夢に送り迎えをお願いしているから、時間を後ろにずらす事は、したくない。


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