先生がいてくれるなら③【完】


12月初旬のある日、先生から『次の日曜日、立花んちにお邪魔していい?』と電話があった。


「え、っと、日曜日は多分、お母さんがいますけど……?」


私がそう答えると、『うん、だから。お母さんに都合聞いといてくれる?』と言われた。


思わず電話口で茫然としてしまう。



『去年のクリスマスは、挨拶も無くお前をうちに泊めただろ? 罪悪感ハンパなかったから、今年はちゃんと挨拶させて』



──と言うことで、先生が我が家に挨拶に来てくれることになった。


えっと。


“挨拶”って、“そう言うこと”、だよね……?





日曜日──、電話で約束した通り、先生が私の家に挨拶に来てくれた。


先生は特に緊張しているようには見えなくて、むしろ私の方が緊張してるって言う……。



「ご挨拶が遅くなってしまって、申し訳ありません。本来なら一年前に伺っていなければいけなかったと、本当に申し訳なく思っています」


そう言って、先生が頭を深く下げる。


今日の先生はスーツ姿で、ビシッと決まっていて、本当に惚れ惚れするほど格好いい。


「そんな、先生、どうか頭をお上げになって下さい。私も仕事柄忙しくしていますし、先生もお忙しいと聞いています。気にしていませんので……」


まぁ、途中、別れてたし、ね。


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