先生がいてくれるなら③【完】
去年のクリスマスのあと別れてしまったのは、お母さんも知っている。
私のあまりの落ち込みように、すぐにそれに気付いたらしい。
私は何も言ってないから、どうしてあの時別れることになったのかは、お母さんは未だに知らない。
だから、あの件に高峰さんが関わっていることも知らないのだ。
「今日は、明莉さんとの交際を認めて頂きたく、ご挨拶に伺いました」
……わっ、来たっ。
先生の真剣な声と表情……。
お母さんも、表情こそ優しく微笑んでいるけど、やっぱり少し緊張しているように見える。
「教師という立場で教え子である明莉さんにこのような思いを持つのは、正しいことでないことは分かっています。ですが、明莉さんを想う気持ちに嘘を吐くことは出来ません。どうか、結婚を前提としたお付き合いをお許し頂けないでしょうか」
先生は再び、頭を深く下げた。
私も慌てて、同じように頭を下げて、お母さんの言葉を待つ。
「……いえ、むしろね、こんな子で良いんですか、先生……?」
私は思わず、弾かれたように頭を上げた。
「ちょ、お母さん、“こんな子”って……!」
「だってそうでしょ? 先生は頭脳も容姿も素晴らしくていらっしゃるから、……」
ちょっとちょっと、母上、『いらっしゃるから』の後の無言は、何ですか!?
そりゃ、先生だったら、選び放題ですよ、知ってたし、知ってるし、存じ上げておりますよーだ!
でもそれを、私を産み育てたお母さんが言う……!?