先生がいてくれるなら③【完】
「明莉さんは、真面目で、明るくて、まぁ時々危なっかしいですけど、人のことを思いやる事の出来る素晴らしい人です。私にはもったいないと感じることもあるぐらいです」
うわっ、待って、そんな風に言われると、ちょ、照れる……!
真っ赤になって俯く私とは対照的に、先生は背筋をしゃんと伸ばし、優しい声色で先を続けた。
「もちろん明莉さんはまだ高校生です。ですから、明莉さんが高校を卒業するまでは節度有る交際を心がけます。どうか、交際をお許し頂けないでしょうか」
先生が再び頭を深く下げる。
私は真っ赤になりながら、慌てて同じように頭を下げた。
──お母さんは、私と先生のこと、去年付き合い始めてしばらくしたぐらいからかな、なぜか知っていて、お付き合いすることを許してくれている。
先生にもその話はしたけど、先生は「けじめだから」って言ってくれて……。
お母さんは、ふふっ、と小さく笑って「そんな風に言っていただけて、明莉はしあわせですね。先生、ありがとうございます」と嬉しそうに微笑んだ。
先生と私が頭を上げると、お母さんは「こちらこそ、娘のこと、どうぞ宜しくお願いします」と言って、今度はお母さんが先生に頭を下げた。
「ありがとうございます、宜しくお願いします」
先生も、私も、また頭を下げる。
──良かった、すごく、すごく嬉しい……。
と、言うわけで、晴れて私たちは母公認の仲となった。
先生は、単身赴任中のお父さんには、年末年始の休暇で帰ってきた時に改めて挨拶してくれると言う。
お父さんは先生を見て、どう思うかな……。
付き合ってる人がいる事は、言ってある。その人が年上だと言うことも。
ほんのちょっと、不安……。