先生がいてくれるなら③【完】


──季節はあっという間にクリスマスになった。



去年と違って、今年は先生のおうちで、“まったりクリスマス”。


外で過ごすクリスマスも楽しいけど、こう言うアットホームなクリスマスの過ごし方も、私は全然嫌いじゃない。


と言うか、先生と一緒に過ごせるなら、どんなシチュエーションだって、丸ごとしあわせだ。



料理は私が作るって言ったのに、先生がどこかから手配してくれたらしく、なんだか豪華な料理がテーブルの上に並んでいた。


冷蔵庫にはデザートも用意されているらしい。


「お、おいしそう……」


私が作っても良かったのに、と、ちょっとがっかりしてたんだけど、これを見て完全に白旗を揚げましたよ、えぇ。


勝てるわけない、これはどっかのレストランのシェフに頼んだ料理だよ。


「……気に入った?」

「……はい」

「じゃ、食べよう?」

「はい」


豪華な料理を前に、“はい” しか返事が出来なくなる。


だって、あまりにも美味しそうだ、きっと絶対めちゃくちゃ美味しいやつだ、間違いない。


美味しそう美味しそう美味しそう……。



そんな私を見て、先生が肩をふるわせて笑っていた。


「食べ物で懐柔できるの、簡単すぎて面白すぎだろ……」


ひどい……、でも、間違ってない……。


「食べよう?」

「はい。いただきます……」


料理を口に運ぶと、しあわせな味が口いっぱいに広がった。


「ん、おいひい……」


心底しあわせそうにつぶやいてしまった私を見て、先生はまたクスクスと笑っている。


「そりゃ良かった」


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