先生がいてくれるなら③【完】
あとで料理をどこに頼んだのかと尋ねると、ご実家で時々頼んでるプロの出張料理人に来て貰ったらしい……。
どうりで美味しいはずだ、私が勝てるはずもない。
「なに拗ねてんの?」
「……だって」
「俺は立花がしあわせそうに食べ物を食べてるところが見たかったの。もし、俺がしあわせそうに食べてるところが見たいなら、結婚してくれたら毎日見られるけど……?」
綺麗な顔で、ブルーグレーの瞳をキラキラさせて、小首を傾げて……。
……っ、ちょっ、まっ、て、反則っ!!
その顔、その瞳、その仕草、……反則っ!!!
それに、け、けっ、けっこ、ん…………っ!?
「ふははっ、顔、真っ赤」
だ、ダメだ、この人──いや、この悪魔には勝てない……。
先生はまだ肩をふるわせながら笑っている。
「まぁ、結婚って言うのは冗談だけど……」
……えっ、冗談なんだ。
ちょっとガッカリ。
「大学合格したら、また美味しいもの作りに来て」
甘い声でそう言われてしまえば、もう何も言い返すことは出来ない。
私がコクリと頷くと、先生は私の目の前に小さな箱を差し出した。
ドキリ、と、私の心臓が音を立てる。