先生がいてくれるなら③【完】

先生がその小さな箱をパカッと開けると、中には、キラキラと煌めく指輪が収められていた。




「先生、これ…………」




思わず震えてしまう声でそう問いかけると、先生は小さく頷いた。


「学校にはつけて行けないし、正式なプロポーズもまだ出来ないけど……」


目の前が、涙でみるみる霞む。


「これで、プロポーズの予約、させて」


胸がいっぱいで、言葉が何も出てこない。


ただただ、喜びと驚きの涙が、私の頬を伝った。


「受け取ってくれる……?」


少し不安げな表情をする先生に、私は大きく頷いてみせる。


すると、先生は安堵の笑みを浮かべ、「良かった……」と小さな声で呟いた。


受け取らないわけがないです、先生……。



先生は、手にしていた小さな箱から指輪を取り出し、私の左手の薬指に指輪を填める……。


ピタリと私の指に収まった指輪を眺めた先生は、「男除けだから。学校では出来ないけど、外に出る時はつけといて」と、にっこりと微笑みながら私に告げた。


男除け……、なるほど……。


こう言う、束縛とも捉えられるような言い方をされる事を嫌がる人もいるかも知れないけど、私は先生にそう言われて、心の底から嬉しかった。


決して他の人にフラフラしたりなんかしたくないし、先生以外の人に言い寄られるなんて、迷惑でしかない。


私には、先生だけだから。


だから私はしっかりと頷いて、「学校の時以外は、ちゃんとつけますね」と言うと、先生は優しく笑ってくれる。


うーん、この笑顔が見られるんなら、ずっとつけてる!


< 290 / 352 >

この作品をシェア

pagetop