先生がいてくれるなら③【完】

嬉しくなって思わず笑みを漏らすと、先生が「なに? やらしー笑い方」と言って、私をからかった。


「やっ、やらしくないですっ。嬉しいだけ」

「ふぅん?」


そう、嬉しいだけ、です。


同じ匂いを纏えるなんてこと、滅多にないんだから。


去年のクリスマスと、今日、だけ。



私と先生の身体が密着して、ドキドキしてしまう。


嬉しすぎて、ドキドキして、くらくら、してしまう……。



先生が私の髪に顔を寄せて、「ん、立花から、俺とおんなじ匂いがする……」と囁いた。


ふふっ、同じようなこと考えてる……。


埋めていた顔を上げて先生を見上げると、先生は私の額に可愛らしい音を立てて口づけた。




先生は日頃の疲れがあるのだろう、私を腕の中に抱き込んで「おやすみ」と言ったあと、すぐに眠りについた。


先生の規則正しい息づかいが、私を夢の中へといざなう。



ほどなくして、私も、しあわせな眠りについた────。



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