先生がいてくれるなら③【完】
他の先生方が聞いているかも知れない場所では言えないような事を、俺に言おうとしないで欲しい。
俺は迷惑そうな表情を隠しもせずに、その女教師を見た。
困り果てている彼女。
知ったことでは無いけど……、仕方ない、「分かりました、じゃあ……」そう言って、俺たちは職員室を出た。
どこかの部屋で、とも思ったが、後々、密室でこの女教師と一緒にいたなんて噂になったら困る。
俺は、少し遠いけど、普段は滅多に人が立ち入ることの無いB棟の裏庭へと移動した。
「それで、話って何ですか?」
「えっと、あの……」
何を言われるかだいたい想像はつくけど……。
「あの、あの、……好き、です、……付き合っていただけませんか……?」
はぁ、やっぱりそれか…… 。
申し訳ないけど、俺の返事は決まっている。
「付き合ってる人がいるので、あなたとお付き合いすることは出来ません」
俺には最愛の人がいる。
あいつ以外、誰も好きにならないし、付き合うこともない、絶対に。
俺には立花だけ、あいつただひとりだけだから……。
はっきりと断ると、その女教師は涙ぐんで「そう、ですか……」と小さな声で呟いて、頭を下げて走り去った。
──はぁ、やれやれ。
生徒だけでもうんざりなのに、教師まで……。
俺は大きなため息をひとつ吐いて、その場を後にした。