先生がいてくれるなら③【完】

立花の母親は、俺の親父と弟の光貴がいる大学病院の小児科で看護師として働いている。


その小児科に親父と光貴が代わる代わる押しかけて、俺のことを色々吹き込んでいるらしいと知ったのは、ごく最近のことだった。


余計なことをしないで欲しい……。


何を吹き込んだのか光貴に吐かせたら、「え、何も言ってないけど? 強いて言えば『兄はああ見えてとても一途で相手を大切にする人なので』とか『ふつつかな兄ですが、どうぞ宜しくお願いします』って言ったかな?」とか巫山戯た返事が返ってきて、思わず気絶しそうになった。


親父は親父で、『愚息がお嬢さんと大変懇意にさせて頂いているそうで、申し訳ない』と頭を下げたとか……。


あの二人は揃いも揃って、何てことをしてくれてるんだ。


それが、既に去年の夏の終わり頃の事だって言うから、本当に、あの二人は……。


そもそもその頃って、まだ付き合ってなかったっつーの。


……まぁ、そんな経緯があったから、去年のクリスマスのお泊まりをアッサリと許して貰えた、と言うのが、あの時の真相だ。



周りの余計な根回しがあったとは言え、交際相手本人から挨拶無しとか、無礼すぎて言葉も無い。


そこは素直に反省し、やはりきちんと挨拶をさせて貰わなければならない、と思う。


とても緊張するけれど、避けては通れない道だ。


今更、ではあるけれど、どうか反対されたりしませんように、と心の中で祈った。

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