先生がいてくれるなら③【完】
そろそろ気分転換が必要なんじゃないかと思い、私はある計画を思いつく。
「……高峰さんって、子供、好きですか?」
「は? 好きなわけ無いでしょ!?」
はいはい、予想通りのお答えをいただきまして、本当にありがとうございます。
「そうですよね。じゃあお散歩にでも行きましょう。ちょっと車椅子に乗ってもらって良いですか?」
「は? イヤよ!」
「まぁまぁ、そう言わず……」
そこへタイミング良く、彼女の担当医が病室へ入って来た。
「──どうしたんですか?」
そう問う担当医に高峰さんが、何でも無いです、と口にしようとしたのを遮って、急ぎ先手を打つ。
「いやぁ、ベッドに座りっぱなしだと退屈だと思って、ちょっと車椅子で散歩にでもお連れしようかと思ったんですけど、良いですか?」
「それは良いですね。高峰さん、良かったですね」
担当医の後押しをいただき、私は彼女を病室から連れ出す計画を実行へと移す。
「あの、先生、車椅子に移動するのをお手伝いしていただけると助かるんですけど……」
「お安いご用です」
さすがに嫌がる高峰さんを私一人で車椅子に乗せるのは難しい。
しかし、だ──。
担当医が私の意見の後押しをし、ベッドから車椅子への移動を手伝ってくれた。
高峰さんもさすがに医者の言うことには反発する事が出来ないらしい、大人しく車椅子に座っている。
……いや、自由に身体が動かせないから大人しいだけだけど、とりあえず口も大人しくなったのはありがたい。