先生がいてくれるなら③【完】

昨年と同様に、クリスマスの夜を朝まで一緒に過ごす許可を得ている。


──もちろん、健全なお付き合いを誓った後だ、手を出したりなんか絶対にしない。


立花もそれは分かってるようで、「一緒に眠るだけ、だからな?」と言うと「分かってます」と返事が返ってきた。


……今年も理性との大格闘か。


いや、分かってる、そんなことは百も承知だ。


傍にいられるだけで、今は十分ではないか。



先にベッドへと入り、立花を待つ。


「おいで」と言うと、嬉しそうに、もそもそと隣にやって来るさまが可愛らしくて堪らない。


早くおいで、俺の腕の中に。


少し距離を置いた場所で横になろうとする立花の腕を引いて、すっぽりと抱き込む。


腕の中の立花から、普段俺が使っているボディーソープやシャンプーの匂いと、それとはまた違う少し甘い香りが匂い立ち、それが立花自身の香りなのだと気づき、思わずクラクラと眩暈がした。



「……ふふっ」


小さく笑う立花に、思わず「やらしー笑い方」と言ったが、多分やらしいのは俺の方だ。


立花から香る彼女自身の香りが、俺の気持ちを昂ぶらせる。


密着している箇所から立花の熱が伝わり、ひどく落ち着かない。


「やっ、やらしくないですっ。嬉しいだけ」

「ふぅん?」


俺も、すごく嬉しい。


どう表現すれば、俺の今の心の内を全て表すことが出来るだろう?


もう多分、言葉なんかでは無理な気がする。


「ん、立花から、俺とおんなじ匂いがする……」


立花の髪に顔を寄せると俺と同じ匂いがして、ますますしあわせな気持ちになる。


俺を見上げて嬉しそうに微笑む立花の額に口づけて、「おやすみ」と言って立花を腕の中に抱き込んだ。


< 303 / 352 >

この作品をシェア

pagetop