先生がいてくれるなら③【完】

年が明けると、三年生は完全に受験一色になる。


学校は授業がなくなり、登校日以外は自宅学習なので先生と会えない日が続く。


会えないのは寂しい、けど、……自宅で受験勉強をする私の左手の薬指には、クリスマスに先生から貰った指輪が光っている。


『プロポーズの予約をさせて』と、渡して貰った指輪──。


私の誕生石であるピンクトルマリンと小さなダイヤが、ピンクゴールドと共にキラキラと光っている。




「……うん、よし、頑張る」



勉強に疲れた時は指輪を見つめ、よし、と気合いを入れ直す。


卒業以前に、希望の大学に受からなくては、意味が無い。


とにかく頑張ろう、受験が終わって、大学に受かって、卒業すれば、きっと今よりはたくさん先生に会える。


それだけを励みに、私は連日受験勉強を頑張っている。




──そんな受験勉強と試験の合間に、私的に一大イベントがある。


先生は「そんなのどうでも良いから、勉強を頑張れ」と、相変わらず素っ気ない。


でも私は、去年から……ううん、付き合うことになった一昨年の秋から、ずっとこの日を待っていた。



──先生の、誕生日。



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