先生がいてくれるなら③【完】

去年は別れてしまっていたから、お祝いすることが出来なかった。


どうしても言いたかった言葉だったのに、全部嘘の言葉に塗り替えて、視線すら合わせることが出来なかったあの日……。


また先生と一緒にいられる日が来るなんて、あの時は想像も出来なかった。


ただただ、泣いてばかりだった一年前……。



だから、今年こそはちゃんと先生の誕生日をお祝いしたかった。


この日をどれだけ待ちわびていたかなんて、先生は知らないだろう。


この日限りは、勉強なんてどうでもいい。


それ以外の日は、ずっと勉強を頑張ってきた、だから、せめて今日だけは。



先生にお願いしてなんとか一緒に過ごす時間を取って貰って、私はいま、先生のマンションにいる。


豪華な料理は作れなかったけど、先生が喜んでくれそうなメニューを選び、持参した。


先生はいつも通り「美味しい」と言って食べてくれて。


私は、“嬉しい” が全身から飛び出しそうで、美味しそうに私の作った料理を食べてくれる先生を眺めるだけで、完全にお腹いっぱいだった。




今日を、この瞬間を、本当に、どれだけ心待ちにしていたか。


どれだけ「おめでとう」と言いたかったか。


どれだけ「生まれてきてくれてありがとう」と叫びたかったか。


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