先生がいてくれるなら③【完】
食後、私が帰るまでの、ほんの少しだけ与えられた、ふたりきりの時間──。
私は先生のブルーグレーに光る美しい瞳をしっかりと見つめた。
自然と頬が緩む。
息を飲むほど美しい、私だけの宝石だ。
この宝石が、私だけを見つめてくれているなんて、すごくすごくしあわせな気持ちになる。
だから、私は先生にこの想いを全て告げなくちゃいけない。
「先生、お誕生日おめでとうございます」
私の言葉に、先生が「ん、ありがとう」と返す。
──“俺、生まれてきたこと、後悔してるから”
一昨年、私の誕生日を祝ってくれたその日に先生が口にした言葉を思い出すと、今でも胸が苦しくなる。
今でも、そう思ってるの……?
それとも、今は、もう、大丈夫になった……?
たとえどちらだったとしても、私が伝えるべき言葉は、ひとつだ。
「先生、生まれてきてくれて、ありがとうございます。大好きです」
先生の目を見て、手をギュッと握って、はっきりとそう伝える。
「出会えて良かったです」と、しっかりと伝える。
私の誕生日に、先生も私に同じ言葉を伝えてくれたけど、私も同じ事をいつも思ってる。
でも、“思ってる” だけじゃ、ダメなんだ。
言葉にして伝えたいから。
ううん、言葉だけじゃなく、全身で、全力で、先生に伝えたいんだよ……。