先生がいてくれるなら③【完】

先生の頬がフッと緩み、「なんで立花が泣くんだよ」と笑いながら言われ、初めて自分が泣いてることに気がついた。


だって、多分、すごく嬉しかったんだ。


やっと、自分の言葉で伝えることが出来たから。


世界中にたくさんの人間が存在するけれど、そんな中からたったひとり、心から好きだと思える人に出会い、“好き” だと伝えられる幸運、“生まれてきてくれてありがとう” と言葉に出来る喜び、“出会えて良かった” と心から思える奇跡──。



先生が、私の頬を流れる涙を指で優しく拭う。



「ありがとう、立花。今は、心から “生まれてきて良かった”って、思うよ。全部、お前のおかげだ。本当に、ありがとう」



私は涙を流しながら、コクリと頷いた。


──良かった、先生はもう、自分の存在を嫌いなんかじゃない。


そう思うと、また涙が止まらなくなった。



「泣き虫」

「だって、うれ、しくて……」

「ん、俺も、嬉しい」

「良かった……」


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