先生がいてくれるなら③【完】

「あのね、先生。高い物じゃないから、大丈夫です。……受け取って、くれませんか?」


私がおずおずと差し出すと、先生は私の頭をふわりと優しく撫でたあと、「ありがとう」と、プレゼントを受け取ってくれた。


「開けても良い?」

「もちろんです」


似合うと良いんだけどなぁ、と言うか、絶対に似合うと思って、買いました。


先生は慎重に包みを開く。


「……あ、」

「……どう、ですか?」

「うん、……と言うか、どう?」


取り出したそれを、先生が身につける。


「うん、めちゃくちゃ似合います! 男前度が更に上がりました! 死にそう!」

「……はは、死なれたら困るな」

「えー、無理です、ちょっと、心臓が……」


先生が男前すぎて、もう無理かも、心臓もたない。


先生はが伊達眼鏡をかけたまま、ふわりと微笑んでいる。


「うわ、やめて下さい、失敗だったかも、無理です、私を殺しにかかるのやめて……」


先生が “ふわりと優しく微笑む” とか、普段滅多にしないから、これはわざとやっているんだって分かる。


絶対に私を殺しにかかってる。


だって、私いま、心臓があり得ない速度で動いてるもん。


うわわわ、これは完全に自滅かも知れない!


< 311 / 352 >

この作品をシェア

pagetop