先生がいてくれるなら③【完】
──去年の今頃は、立花に振られて酷く荒んだ生活だった事を思い出す。
あの頃はとにかく仕事に没頭していた。
忙しくしていれば立花のことを考えないで済む、と思っていたのに、職場である学校に行けば普通に毎日授業があるし、廊下ですれ違うこともあるし、とにかく地獄のような日々だった。
生きていてあんなに辛いことは無かったかも知れない、と思うほどだ。
お陰であっという間に数キロ痩せて、光貴には「ちゃんと食べろ」と随分怒られた。
立花とよりを戻してからは、すぐに健康的な生活を取り戻し、体重も自分的にベストなあたりをキープ出来ている。
それはやはり、立花の料理の差し入れのおかげだと思う。
良い奥さんになるに違いない。
時々ちょっと抜けてる時もあるけど……まぁそれもご愛敬。
「先生、お誕生日おめでとうございます」
「ん、ありがとう」
あぁ、そう言えば、立花と付き合うようになってすぐに、俺は立花に「生まれてきたことを後悔してる」って、言ってしまったなぁ。
ずっと、本当に長い間そう思ってきたから、なかなか自分を肯定することが出来なかった。
いくら立花が俺を好きだと言ってくれても、俺自身は、自分のことが嫌いだった。
見た目だけのことではない、もう、自分の存在自体が、嫌だった。