先生がいてくれるなら③【完】
それが……、少しずつそうじゃなくなって来て、完全に肯定できるようになったのは、本当の父親のことを知ってからだ。
それでも実父のことを知った瞬間は、自分の浅はかさに自分自身を心底軽蔑した。
けれど、育ててくれた親父、母さん、弟の光貴と広夢、そして立花が、俺のことを温かく見守ってくれているのだと気付いた時、やっと自分自身を肯定できるようになった。
「先生、生まれてきてくれて、ありがとうございます。大好きです」
真っ直ぐな瞳でそう伝えてきてくれる、ただそれだけで、心が震える。
俺の手をギュッと握りしめてくれる立花の小さな手が、とても温かい。
「出会えて良かったです」
立花の頬に、ひと筋の涙が伝う。
俺は「なんで立花が泣くんだよ」と笑いながらも、正直言って、俺もちょっと泣きそうだった。
こんなにも心を揺さぶる愛の告白を聞くことが出来た俺は、世界一の幸せ者に違いない。
愛する恋人の頬に流れる温かい涙を、指で拭う。
「ありがとう、立花。今は、心から “生まれてきて良かった”って、思うよ。全部、お前のおかげだ。本当に、ありがとう」
本当に、心からそう思う。
ありがとう、お前がいてくれて良かった、出会えて良かった、好きになってくれてありがとう、心から愛している……。